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今月の商売のヒント
 
 【ある小さなお店のお話】

2008年4月1日 (火)

 

4月14日〜15日に、日本三大美祭のひとつに上げられている高山祭があります。岐阜の小さな山間に 11台の荘厳な屋台が曳き揃えられます。この時期になると必ず思い出すことがあります。それは、私の古い知り合いの出来事です。初老の彼は、神奈川県で小さな工務店を20年以上も営んでいましたが、一昨年の寒い冬に会社を閉じました。それまで彼は、毎年必ず2回ほど飛騨高山に行っていました。決まって、春の高山祭りと秋の高山祭りが終わった3日後です。彼は「祭りが終わった後の雑然とした空気が好きでね」とよく言ったものです。
初老の夫婦が、飛騨高山にある小さなお店に毎年必ず2回訪れていました。そして、一昨年に奥さんが亡くなりました。それが、20年以上も続けてきた小さな工務店を閉じた理由でした。奥さんがまだ元気な頃、飛騨高山にあるそのお店に、夫婦で3年ほど通いました。だから、初老の夫婦は6回だけそのお店を訪れたことになります。一昨年の4月18日、彼は、一人きり小さなお店に入りました。すると、その前の年までと同じように、目の前にお茶が2つ出されました。彼は、黙っていました。お店の主人もなにも言いませんでした。その翌年も翌々年も同じです。まったく同じような時間が流れました。「きっと分かっていたんだろうね」と彼は後日、私に涙目で言いました。私は、彼の話を聞いてとっても感動しました。今すぐにでも飛騨高山に行きたくなったほどです。しかし、彼はその小さなお店の名前も場所も私には言いませんでした。私もあえて聞きはしませんでした。自分一人だけの想い出として、きっと言いたくはなかったのでしょう。店の主人と心が通い合ったのです。私は、寡黙とはただ黙っていればいいというものではなく、相手の気持ちを察して、相手の心の中を通じて話すことじゃないかと思いました。おしゃべり が上手な人でも、決して心が通い合うとは限りません。また、不器用で物静かな人 でも、心が通い合うことはあるはずです。飛騨高山にある小さなお店の主人は、間 違いなく後者です。私は、そんな人間になりたいし、そんな仕事がしたいと心から 思いました。






山本祐一
1956年 茨城県神栖市波崎生
1975年 銚子商業高校卒業
1979年 専修大学商学部卒業
1987年 監査法人トーマツ退社
1987年 山本会計事務所開業



 
   
 
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